地方競馬の「特選」

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競馬の競走種別でよく聞くのは「重賞競走」や「特別競走」かと思われます。さらに地方競馬には「準重賞競走」があり、JRAには「リステッド競走」があります。

一方、一部の地方競馬の中には「特選」と付された競走を行っている場があります。競走名が「〇〇特選」だったり、出走する組の表示やサブタイトルに「特選」と表示されているなど場によって扱いが異なっていますが、これはどういうものなのか。まとめてみました。

特選は競走種別ではない

地方競馬全国協会が主導して2010年4月から実施した「競走番組に関する統一事項」において、競走種別は「重賞」「準重賞」「特別」「普通」の4区分とされました。この明示の主目的は平場の競走の呼び名が主催者によって「普通競走」と「一般競走」で分かれていたのを「普通競走」に統一することにあったようで、もともと「特選」を競走種別とはみなしていなかったようですが、発表の中で、

特別 賞金、出走馬の質などの高い競走です。
主催者側で出走馬を選定して行う「選抜特別」
といった競走も含まれます。
普通 いわゆる"平場"競走です。主催者側で
出走馬を選定して行う「特選」や「選抜」
(牝馬のみを選んだ「選抜牝馬」)といった
競走も含まれます。
地方競馬情報サイト「2010年4月からの競走番組に関する統一事項について」2010.3.25発表より抜粋(全文→こちら)

という例示があり、「特選」は基本的に正式な競走種別の中の小区分といった位置づけがされています。

「特選」がある地方競馬

現在特選と表示する競走を行っているのは南関東4競馬、金沢競馬、笠松競馬、佐賀競馬です。では特選とはどういう競走なのかというと、各場ごとに違います。それぞれで見ていきましょう。

南関東4競馬~賞金が高い普通競走~

南関東4競馬(浦和・船橋・大井・川崎)の特選競走は共通して「賞金が高い普通競走」です。ただし、設定の傾向に関しては4競馬それぞれに違いがあります。同級の場合、賞金上の関係は「特別」>「特選」>「普通」となります。

なお、「特選」が競走名の条件に入るのは浦和と船橋の2場だけで、大井と川崎は副題に「特選」の文字が入る傾向があるため、「地方競馬情報サイト」等のネット上の出馬表では各レースごとの詳細な出馬表でないと表示されないことがあります。

浦和競馬

浦和競馬ではC3級と3歳で多く見られ、賞金順編成(1組、2組と表示されるレース)の上位が特別競走になっていない開催の場合、この編成上位の1~2組が特選と指定され、通常の普通競走より賞金が上乗せされます。
また、所属騎手による騎乗馬抽選の年間シリーズ競走「浦和ジョッキーズラウンド」が特選競走になって賞金が上乗せされることが多いほか、年明けのC3級で明け4歳馬限定の特選競走が若干組まれることも定番となっています。
このほか、番組編成の関係で古馬C1級以下のクラスでも、稀に特選に指定されて通常の普通競走より賞金が上積みされる競走があります。

船橋競馬

船橋競馬も浦和競馬同様に賞金順編成の上位が特別競走になっていない開催で、賞金順編成上位組を特選とする形が基本でした。ただ、船橋は特別や特選の指定をせずとも賞金順1組や選抜戦は元々賞金を他の組より嵩上げしており、敢えて特選としていたのはC3級くらいで、さらに2023年度からC級の賞金順上位を特別競走とすることが多くなったことから、この形での特選の設定は減っているように思われます。
このため、現在は番組編成の関係で賞金を上乗せするC級もしくは馬齢限定の競走に対して特選としている競走が見られる程度で、イレギュラーな設定になりつつあります。

大井競馬

大井競馬のルールブックである「大井競馬番組」には特選競走の定義がされています。インターネット上で公開されている各場の資料の中で特選競走を定義づけているのはこれだけかと思われます。

ア 競走の意義に関すること
(中略)
(エ) 特選競走
普通競走のうち一定条件を付した競走であって、競馬競走番組に定めた競走をいう。

「大井競馬番組」より(令和5年度版6ページ「5.定義-(3)競走の種類に関すること」)

大井競馬の場合は、番組編成の関係で賞金を上乗せする普通競走がある場合に特選が設定されます。定例的なものは見当たらず、1開催の中で特選が全くない方が多いため、基本的にはイレギュラーな存在です。

川崎競馬

川崎競馬の特選は、賞金を上乗せする普通競走に対して付けられています。
こちらの設定にはある程度法則性があります。このため、南関東で最も特選を見るのは川崎競馬というイメージがあります。
まず、古馬B級以上の場合、特別競走以上でない競走(「川崎スプリントシリーズ」と呼ばれる900m選定馬戦が多い)は全て特選競走として設定されます。
一方、古馬C級では「川崎2000シリーズ」と副題がつく2000m選定馬戦が特別競走でない場合は特選競走となり賞金が普通競走より嵩上げされます。また、所属騎手による騎乗馬抽選の年間シリーズ競走「川崎ジョッキーズカップ」も特選競走として賞金が高くなっているほか、年明けのC3級で明け4歳選定馬による特選競走も定番として少数行われています。

金沢競馬~特別編成の特別競走~

金沢競馬で特選と表示されるのは、特定のクラスの上位数組を指定し、その範囲の出走予定馬を前3走の収得賞金上位から順に並べ替えた順でレースを行う「特別編成」と呼ばれるレース編成を行った組の中で特別競走となるレースです。

金沢競馬の特別競走はA級の全競走とB1級以下の1組が対象となるのが基本。このためB1級以下で特別編成が行われた場合、特別競走となる1組が特選となります。一方、A1・A2級は級内が全て特別編成の特別競走となり特選となります。

B1級以下の場合は出走条件のクラス・組表示の組が通常の数字ではなく「特選」となります(例:「C1特選」)。一方、A1・A2級は組番号に特選が付与されます(例:「A1[1]特選」)。

特別編成の普通競走の賞金は通常の普通競走と変わりませんが、特選は通常の特別競走よりも賞金が高くなります。

なお、現在の地方競馬の中で特選が特別競走となるのは金沢競馬のみとなっています。

笠松競馬~下級における特別の次~

笠松競馬の特選は特別競走に次ぐ位置づけの競走です。賞金の体系は一般競走より上積みがある額となります。(笠松競馬の要領等を見ると、平場の競走はNARの申し合わせと異なり一般と呼ぶようです)

笠松競馬は各階級ごとに組に対して競走種別を割り当てており、特選を設定している階級では、特別競走の次の1組が特選となります。
かつては2歳以外の全ての階級に特選の設定がありましたが、賞金水準向上の一環で2023年度よりA級とB級の特選は特別競走化されたため、現在はC級と3歳のみの設定となっています。

C級は番組賞金に範囲を設け、上半分「(イ)」と下半分「(ロ)」に分けた編成を行っており、それぞれの範囲内で最上位組の特別と次位組の特選が1競走ずつ設定されています。
一方、3歳では1組が特別、2組が特選となりますが、3歳2組がJRA3歳未勝利馬との条件交流競走になる場合は2組が分割され、条件交流編成馬は「3歳2組(a)」の特別競走、それ以外の2組編成馬は「3歳2組(b)」となりこちらは特選として行われるようになっています。

佐賀競馬~特別がないクラスの上位競走~

佐賀競馬では古馬各クラスと3歳の上位2組の競走(長距離・短距離各1戦ずつ)について、クラス内の番組賞金上位馬に出走希望の馬を加えた選抜戦的な競走としています。
この競走のうち、古馬のA級(A1・A2級混合含む)とB級、3歳は準重賞もしくは特別競走となりますが、C1級とC2級は編成方法は同じでもクラスに特別競走以上の設定がないことから、普通競走扱いながら格付け代わりの「特選」が付され、賞金が上積みされています。

佐賀競馬の特選競走は必ず「〇〇特選」と「特選」が尾に付いた競走名が設定されます。また、ファンファーレも準重賞・特別競走と同じ曲が使用されるなど、B級以上の特別競走等と見た目の違いはありませんが、下級ゆえの格差として「特別」ではなく「特選」としているように思われます。

おわりに

地方競馬では同じ名称でも個性が出るのはよくあることですが、それにしても「特選」はこれほどまでに各場ごとに性格の違いがあるのかというくらいに個性豊かなものでした。

レースの違いを出すために編み出された工夫の一つともいえる「特選」。登場頻度も様々ですが、出くわした時の参考になれば幸いです。

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