ホッカイドウ競馬の番組賞金計算では経歴をベースにした複数のルールを設けており、直近でゆかりのある馬には番組賞金の計算を有利にして定着を促す仕組みとなっています。
なお、ホッカイドウ競馬は直近開催回の全出走申込馬の番組賞金を公式ウェブサイト掲載の「級別表」にて発表しているため、計算せずとも現在の持ち金を知る場合はそちらで確認することができます。
出走申込馬の資格
ホッカイドウ競馬に出走申込できるのは地方競馬全国協会の競走馬登録を受けた軽種の馬(サラブレッド系という縛りはありません)で出生からの経緯に基づく要件があります(このほか転入馬は制裁歴による制限もあります)。
- 満2歳以上10歳以下の馬
- 満10歳を超える馬で日本国内の平地競走で出走経歴のある馬
- 輸入前に外国の競走に出走したことのない3歳以上の外国産馬
- 交流競走等に出走する他地区所属の外国産馬
11歳以上は既走歴が必要ですがこれに引っかかるケースはまずないと思われます。一方、外国産馬の外国未出走は平地他場でも求められているケースが多いですが、加えてホッカイドウ競馬は3歳以上と縛りがあり、2歳の外国産馬はホッカイドウ競馬ではデビュー・移籍できないと読み取れます。
当初格付番組賞金
ホッカイドウ競馬のクラス分けは成績と収得賞金(競走において収得した第1着から第5着までの本賞金)に基づいて算出される「番組賞金」で行われますが、年度の開催期間が4月~11月と区切られているため、シーズンの初戦編成時に基準の額となる「当初格付番組賞金」が設定されます。
この計算の際、在籍する馬は経歴に基づき4パターンに区分されます。
- 前年度以前における最終出走がホッカイドウ競馬の馬(交流競走等で出走した他地区所属馬を除く)
- 本年度初出走以降継続してホッカイドウ競馬で出走している馬。ただし、日本中央競馬会に登録のあった4歳以上馬を除く。
- ホッカイドウ競馬所属馬が前年度ホッカイドウ競馬出走以降、他地区へ転出し、本年度開催初日の前日まで他の主催者の実施する競走に出走した馬
※本年度開催初日の前日=2022(令和4)年度は2022年4月12日
- 未出走馬、経歴馬、再転入馬以外の馬
- 競走経歴のない馬
経歴馬の当初格付番組賞金
本年度ホッカイドウ競馬デビュー馬もしくは前年度にホッカイドウ競馬に在籍し、休催中も移籍せず本年度を迎えた馬が「経歴馬」となります。デビュー馬には地方他場、JRAで一旦登録も未出走で転入してきた馬も含まれますが、JRAで登録して未出走のままホッカイドウ競馬へ転入しデビューする4歳以上の馬は転入馬扱いとなります。
経歴馬当初格付番組賞金
格付時馬齢 | 当初格付番組賞金 |
2歳 | ー |
3歳 | 2歳終了時番組賞金+表Aの算定賞金 |
4~5歳 | 前年度最終番組賞金×0.8+表Aの算定賞金 |
6歳 | 前年度最終番組賞金×0.7+表Aの算定賞金 |
7歳以上 | 前年度最終番組賞金×0.6+表Aの算定賞金 |
表A
「ホッカイドウ競馬開催期間外に他の競馬に出走した経歴馬及び再転入馬」
区分 | 加算 |
ダートグレード競走 JRA主催平地競走 地方主催交流競走(全国交流) 海外の競走 |
獲得本賞金の40% (2歳は15%) |
上記以外 | 加算しない |
2歳のデビュー馬は当然0円スタート。一方3歳は前年末、4歳以上は前年度の最終番組賞金に、残り期間の遠征で得た本賞金を1戦ごとに減額換算して加算した額が当初格付番組賞金となります。遠征競走の換算はシーズン中とほぼ同じです。
4歳のシーズンより前年度最終番組賞金には割引換算がかかり、減額された額で本年度が開始されます。また、馬齢を重ねるごとにその割引率が高くなっていきます(前年「度」のため、本年4月1日以降の獲得本賞金には割引がかかりません)。
古い成績を計算から除外するルールで見られる「高額の賞金を持つ馬が一気に降級する」ケースはない反面、4歳から前年度の成績も割り引かれるため在籍を続ければ前年度最終より軽い格付、場合によっては降級して新年度を迎えることが多いと考えられます。
再転入馬の当初格付番組賞金
再転入馬となるのは、前年度に所属馬としてホッカイドウ競馬に出走した後(シーズン終了まで居る事は要件にはない)、他地区へ移籍して本年度開催初日の前日までの間出走した後、またホッカイドウ競馬に戻って来た馬。一旦移籍しても短期間で戻って来た馬に対し、単なる転入馬とは異なる取り扱いをする場は休催期間がない所でも比較的見られます。
再転入馬当初格付番組賞金
格付時 馬齢 |
当初格付番組賞金 |
3歳 | 転出時番組賞金+ 転出後から前年度最終開催日までの表Bの算定賞金+ 前年度最終開催日の翌日から本年度開催初日の前日までの表Aの算定賞金 |
4~5歳 | (転出時番組賞金+ 転出後から前年度最終開催日までの表Bの算定賞金+ 前年度最終開催日の翌日から前年末までの表Aの算定賞金)×0.8+ 本年1月1日から本年度開催初日の前日までの表Aの算定賞金 |
6歳 | (転出時番組賞金+ 転出後から前年度最終開催日までの表Bの算定賞金+ 前年度最終開催日の翌日から前年末までの表Aの算定賞金)×0.7+ 本年1月1日から本年度開催初日の前日までの表Aの算定賞金 |
7歳以上 | (転出時番組賞金+ 転出後から前年度最終開催日までの表Bの算定賞金+ 前年度最終開催日の翌日から前年末までの表Aの算定賞金)×0.6+ 本年1月1日から本年度開催初日の前日までの表Aの算定賞金 |
※2022年度における適用日
前年度最終開催日=2021年11月4日
本年度開催初日の前日=2022年4月12日
表A(再掲)
「ホッカイドウ競馬開催期間外に他の競馬に出走した経歴馬及び再転入馬」
区分 | 加算 |
ダートグレード競走 JRA主催平地競走 地方主催交流競走(全国交流) 海外の競走 |
獲得本賞金の40% (2歳は15%) |
上記以外 | 加算しない |
表B
「転入馬及び再転入馬」(原表を一部修正)
競走区分 | 加算 |
JRA主催平地競走 ダートグレード競走 海外の競走 |
獲得本賞金の40% |
障害競走 | 加算しない |
ダートグレードを除く 大井、川崎、船橋、浦和主催競走 |
獲得本賞金の60% |
ダートグレードを除く兵庫主催競走 | 獲得本賞金の80% |
その他の競走 | 獲得本賞金 |
計算式を図式化すると下表のとおりです。
後述する転入馬との大きな違いは、ホッカイドウ競馬の休催中の成績。再転入馬はこの部分について経歴馬に近い扱いとなります。
これは算出根拠が前年度開催中の「表B」から、休催中は「表A」に変わるため。これにより、再転入馬の資格を満たせば、ホッカイドウ競馬休催中の成績は換算率40%の競走での入着以外、番組賞金に算入されずスタートします。ただし、今年に入って換算率40%の競走で入着した分は経歴馬と違い馬齢に応じた割引換算からは外れます。
転入馬・未出走馬の当初格付番組賞金
JRAや地方競馬で出走後にはじめてホッカイドウ競馬に移籍する馬、2年度以上前にホッカイドウ競馬に在籍後、一旦他場へ移るも出戻った馬など、「経歴馬」「再転入馬」に当てはまらない履歴の馬は「転入馬」となり、生涯全ての収得賞金を使って当初格付番組賞金が計算されます。
一方、JRAで登録があった馬や、2歳未勝利馬などには例外ルールが別途設けられています。
転入馬当初格付番組賞金
格付時馬齢 | 当初格付番組賞金 |
2歳 | 表Bの算定賞金×0.4 |
3~5歳 | 表Bの算定賞金→(2歳時×0.4)+(3歳以降×0.8) |
6歳 | 表Bの算定賞金→(2歳時×0.4)+(3歳以降×0.7) |
7歳 | 表Bの算定賞金→(2歳時×0.4)+(3歳以降×0.6) |
8歳 | 表Bの算定賞金→(2歳時×0.4)+(3歳以降×0.5) |
9歳以上 | 表Bの算定賞金×0.4 |
表B(再掲)
「転入馬及び再転入馬」(原表を一部修正)
競走区分 | 加算 |
JRA主催平地競走 ダートグレード競走 海外の競走 |
獲得本賞金の40% |
障害競走 | 加算しない |
ダートグレードを除く 大井、川崎、船橋、浦和主催競走 |
獲得本賞金の60% |
ダートグレードを除く兵庫主催競走 | 獲得本賞金の80% |
その他の競走 | 獲得本賞金 |
例外
対象 | 規定 | |
2歳未勝利馬 | 当初格付番組賞金は0円とする | |
JRA登録歴のある |
3歳未出走馬 | |
3歳未勝利馬 | 本則計算結果に25万円を加算。ただし上限160万円。 | |
上記以外の馬 | 本則計算結果に25万円を加算 |
1戦ごとに表Bに基づき換算した数値を合算した後、さらに転入して格付された時点の馬齢に応じた換算率を乗じて割引いた後の番組賞金額でスタートする仕組みとなっています。
高齢馬ほど割引率は高くなるものの、古い成績を計算から除外するルールはないことから、どこかの時期で実績を積んでいれば転入当初はそれなりの番組賞金が付くのではと思われます。
一方、例外規定によりJRA・地方他場問わず2歳未勝利馬の転入は一律で当初格付番組賞金はゼロとなっており、2歳馬には条件を緩めて転入も促している側面もあると思われます。
逆に、出走歴のある3歳と4歳以上のJRAに居たことがある転入馬(直近の転入元が地方他場でもその前にJRAに居れば対象)は本則+25万円という規定により番組賞金が嵩上げされます。JRA在籍歴を有しただけで成績と別に格付けを嵩上げするケースは他の場でも見られます。
クラスへの割り当て
番組賞金が確定すると、馬齢ごとに設定されたクラスへと割り当てられます。なお、3歳馬は当初から一般馬(古馬戦)となるケースがあります。
2歳馬
2歳馬は勝利がない馬は番組賞金に関わらず「未勝利」クラスとなります。また、未出走馬については「新馬」という区分が要領上にも設けられています。
区分 | 条件 |
1組 | 番組賞金100万円超 |
2組 | 番組賞金100万円以下 |
3組 | 番組賞金40万円以下 |
新馬 | 未出走馬 |
未勝利 | 番組賞金に関わらず未勝利馬 (新馬競走がない開催の未出走馬含む) |
3歳馬
3歳馬のうち、転入馬については経歴や成績に応じて馬齢の「3歳条件」のグループか、古馬の一般馬のグループに入るかが分かれます。
3歳条件に格付けされる対象馬
- 3歳の経歴馬(再転入馬含む)
- 3歳の未出走馬
- 3歳の転入馬(過去に日本中央競馬会で登録していない馬、または、過去に日本中央競馬会で登録し、未受賞の馬)
これを読み解くと、JRAに登録歴があり受賞(=入着)歴もある転入馬は3歳条件ではなく、一般馬で格付されるようです。
3歳馬のクラス分けは、2歳と同様に勝利がある場合は番組賞金に応じて数字の組へ振り分けられます。一方、番組賞金に関係なく勝利がない馬は「未勝利」クラスに留められます。
なお、ホッカイドウ競馬は3歳馬の「3歳条件」戦を開幕直後から番組賞金の多い3歳馬を順次一般馬(古馬戦)へ編入する仕組みになっており、重賞以外の3歳馬戦は6月上旬の第4回開催で終了します。
区分 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回以降 |
番組賞金300万円超 | 1組 | 一般馬編入 | 全馬 一般馬編入 |
||
番組賞金300万円以下 | 1組 | 1組 | 一般馬編入 | ||
番組賞金200万円以下 | 2組 | 2組 | 2組 | 一般馬 | |
番組賞金150万円以下 | 3組 | 3組 | 3組 | 3組 | |
番組賞金100万円以下 | 4組 | 4組 | 4組 | 4組 | |
番組賞金に関わらず未勝利馬 (未出走馬含む) |
未勝利 | 未勝利 | 未勝利 | 未勝利 |
(参考)2022年度の場合
- 第1回門別競馬(4/13~4/21)終了後
→番組賞金300万超一般馬編入 - 第2回門別競馬(4/27~5/5)終了後
→番組賞金200万超一般馬編入 - 第3回門別競馬(5/11~5/19)終了後
→番組賞金150万超一般馬編入 - 第4回門別競馬(5/25~6/2)終了後
→全馬一般馬編入
一般馬
4歳以上、及び3歳馬のうち3歳条件に当てはまらない3歳馬は「一般馬」となり、番組賞金に応じたクラス分けとなります。
区分 | 番組賞金 |
---|---|
A1 | 800万円超 |
A2 | 800万円以下 |
A3 | 600万円以下 |
A4 | 500万円以下 |
B1 | 400万円以下 |
B2 | 350万円以下 |
B3 | 300万円以下 |
B4 | 250万円以下 |
C1 | 200万円以下 |
C2 | 160万円以下 |
C3 | 120万円以下 |
C4 | 80万円以下 |
参考:「令和4年度 北海道地方競馬番組編成要領」
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