地方競馬レース編成の基礎知識

レース編成

地方競馬のレースはどうやって組まれるのか。一言で言えば、

主催者ごとに異なります

以上。

ですが、それではこの記事が成立しませんので、少ないながらも共通点を整理するのが本記事。

各主催者から公式ウェブサイトで発表されている情報を元にした独自研究であり、私見としてご覧ください。

レースの編成単位

地方競馬ではレースの編成を、「第2回大井競馬」や「第11回名古屋競馬」といった、競馬を統括する法令で単位として用いられる「開催回」ごとに組むことが一般的です。

ただし、開催回単位の編成が絶対ではなく、連続開催の途中で開催回や年度を跨ぐ場合に回跨ぎでレースを編成するケースも見られるほか、高知けいばは開催日程と別の「編成サイクル」という日程を3~4日で区切ったカレンダーを用意し、そのサイクルごとにレースを編成するケースもあります。

レースの組み方

地方競馬では、各主催者ごとに定めている競走馬の成績の指標の近い馬同士でレースを組むように番組編成を行うのが特徴です。

レース編成に使われる評価指標

評価指標は獲得賞金を元に各主催者がそれぞれ有する規定に基づき算出された「番組賞金」「格付賞金」などと呼ばれる数値を用いるのが一般的ですが、兵庫県競馬は2歳馬以外では着順を換算した「ポイント」を用いています(以下「番組賞金」で統一)。

賞金による評価はJRAでも「収得賞金」の名称でクラス分けや馬の出走可否の指標に使われますが、地方競馬の場合はそれだけでなく、どのレースに出走するかを決める指標としても広く使われています。

番組賞金順編成

地方競馬で最もポピュラーであるのが番組賞金順と呼ばれる編成です。

出走希望馬をクラスごとに集約した後、クラス内の馬を番組賞金順に並べ、上位から順に分割した「組」を作り、これをレースの編成単位とするものです。

地方競馬は来歴が異なる馬が集まるゆえ、実績と番組賞金が釣り合わない馬がいる場合もあり、必ずしも「指標が近い=実力が近い」ではありませんが、根拠ある成績指標として、この評価の近い馬同士でのレースを組む手段となっています。

「組」をどのようにレース編成に当てはめていくかは主催者によって異なりますが、概ね次のような傾向に大別されます。

  • 「組」をそのまま1つのレースにする
  • 同一条件とした複数レース分の「組」をおおまかにグループ化しておき、出走投票時に出走馬の番組賞金順で正式に「組」を作り1つのレースにする(「一括(出走)投票」と呼ばれます)
  • 複数の「組」を最初からグループ化。同時にグループに対応した複数の競走を用意し、どのレースに出走するかは出走投票時に選択する。

選抜による編成

地方競馬独自といえるのが、本則とは別に主催者が競走成績等に基づいた条件を設定し、それを元に出走馬が選出される「選抜戦」です。

番組賞金順では、賞金は近いが近走成績には差がある馬が集まったり、評価が近い馬が何度も対戦することがあり、メンバーの流動性が乏しくなることがあります。

そこで、番組賞金順では実現できない組み合わせが生まれるような条件を設定して、それに基づいた馬を集めるのが一般的な選抜戦です。選抜戦自体が新味ある組み合わせとなるだけでなく、選抜馬が抜けたことで、通常編成の顔ぶれにも入れ替わりが生じる副次的な効果があります。

ポピュラーなのが成績による選抜で、例として以下のようなものが見られます。

  • 前走1着馬を集める
  • 番組賞金順の上位3組を近3走の獲得賞金順に並び替える
  • 指定した範囲内に属する牝馬の番組賞金上位を集める
  • 未勝利馬、未受賞(入着歴がない)馬を集める

また、選抜戦は基本的に上位の馬を集めることが一般的ですが、逆に勝利していない馬が集まるような選抜ルールを設けるケース、あるいは地元専門紙記者に出走馬の選考に加わってもらう「記者選抜戦」といった例も見られます。

一方、南関東地区にも主に特殊な距離の競走を中心に「選抜(馬)戦」(川崎競馬のみ「選定馬戦」)が設けられていますが、こちらは主催者が引き抜く選抜ではなく、事前に選抜戦への出走希望馬を募ったうえでその中から選抜する仕組みとなっています。

出走希望による編成

JRAでは一般的な「このレースに出走したい」という希望を募り、その馬によって行われるレースは地方競馬では少数派です。

地方競馬でも交流重賞等の主要な競走は基本的に希望を募る他、所属頭数が多い競馬場では普通競走や条件級の特別競走でも距離が特殊な競走で希望を募るケースがあります。

ただ重賞競走であっても希望する馬が少ないケースもあったり、距離が特殊な競走を希望する馬が集まらないケースが見られます。

このため、重賞等の不成立にできないレースの場合、希望馬が必要な頭数に満たない場合は番組賞金上位馬を編成するといった規定を設け、非希望馬も加えて頭数を確保するケースがあります。

特に在籍頭数の少ない主催者では、興趣あるレース作りと希望に沿ったレースを組むことを両立させるのは現実的になかなか難しいように見えます。

レース編成の手順

レースはどういう手順を踏んで組まれていくのか。この点は概ね共通しているように思われます。(ただし下表に記した期間はおよその目安で、主催者によって異なります)

地方競馬レース編成の大まかな流れ
  • 手順1
    概定番組発表

    およそ1か月前

  • 手順2
    出走申込

    開催初日の1~3週間前

  • 手順3
    重賞等予備登録

  • 手順4
    確定番組発表

    開催初日の数日前

  • 手順5
    出走投票

    開催日、もしくは連続開催初日の2~3日前

  • 手順6
    出馬表確定

    出走投票当日もしくは翌日

  • レース実施

概定番組発表

地方競馬は一部地区や交流競走を除き、各主催者ごとの所属馬だけでレースが行われます。在籍頭数には限りがあるため、なるべく出やすいレースを形どり、多くの出走馬が集めなければ小頭数レースの発生やレース不成立を起こす恐れがあります。

地方競馬の番組編成では最初に「概定番組」と呼ばれる予定の番組表が作成されることが一般的で、多くの主催者は公式ウェブサイトでも公開しています。

概定番組にはこの開催日には何レース予定し、各レースはどのクラスで何mの競走を行うのか、また別定重量で行う場合はそのルール、また注意事項なども記されており、一見完成された番組表のように見えるものですが、その名の通りあくまで「おおむね定めた」という予定稿的な位置づけです。

各陣営は、予定された番組を見てこの開催で使うのか、使う場合は自己条件なのか、別に登録を要するレースに申し込むのかを決めることとなります。

事前発表の番組を変えることはさほどないJRAと違い、地方競馬では、後述の出走申込の結果を受け、申込頭数が少なかったり、申込の傾向が概定番組の想定と違っていた場合は、より出走しやすいように同条件のレースを増やしたり、希望の多い距離の条件のレースに変える等の変更を行い、概定番組のレースを組み直すことが一般的です。

概定番組通りに全てのレースが行われることは稀ですが、ファン視点で見ると概定番組の発表によって重賞、準重賞といった主要レースや企画系のレースの実施をあらかじめ把握することができます。

出走申込

地方競馬では、最終的な出走への意思表示である出走投票の前に、その開催に出走したいという前段階の意思表示として「出走申込」という申し込みを行います。出走申込は各地方競馬主催者の実施規則にも規定されている重要な手続きです。

在籍頭数に限りのある地方競馬では、出走馬をなるべく多く確保して開催を行うため、この出走申込により出走頭数を把握し、クラス内の組分けを調整することとなります。

重賞等予備登録

JRAでは、重賞やリステッド競走を含めた広義の特別競走に出走を希望する場合は出馬投票(=地方競馬の出走投票)前の定められた手順で「特別登録」と呼ばれる事前登録を行う必要があります。

一方地方競馬では、交流重賞等の主要な競走や企画系競走、特殊な競走距離の競走へ出走したり、格上挑戦するには出走申込後、もしくは出走投票時に出走を希望することを伝えなければならないと概定番組で定めているケースがあります。(稀に出走申込前に締め切られるケースもあります)

この登録の呼び名は各主催者によってまちまちで「予備投票」「出走希望」「予備登録」「特別競走登録」「予備申込」「希望投票」などと呼ばれます。

また、登録ではなく出走申込後に行われる出走予定馬の馬体検査の際に申告することで意思表示するケースもあります。

主催者は前項の出走申込と予備登録をベースにして、概定番組で組んだ番組と実際の申込状況を擦り合わせ、改めて番組の編成を検討した上で、各レースにどの馬を出走させるかの選定も進めます。

確定番組発表

出走申込と希望を踏まえて再検討された結果となる最終的な「確定番組」が開催初日の数日前に決定され、発表されます。

余談ですが「概定番組」は公表している主催者すべてがほぼ同じ名称なのに対し、最終発表の番組は主催者によって「確定番組」「更正番組」「決定番組」「改定番組」…と名称が異なっています。(以下「確定番組」で統一)

また、概定番組を発表しない(存在しない?)主催者も、この段階に相当するレース編成の発表はほぼ実施しています。

重賞、準重賞、交流競走が変わることはまずありませんが、いわゆる平場の番組の部分では、概定番組と比べてレース数の増減、競走の実施日、距離やクラスが変更されたり、出走申込の段階で成立しないと踏んで特殊な設定のレースが消滅して一般的な設定になっていたりと、どこか一部分は概定番組と変化していることが大半です(一切変更がない場合でも発表は行われます)。

なお、確定番組発表の段階で大半の主催者は各レースへの編成馬(出走予定馬)を合わせて発表します。つまり、地方競馬は出馬表発表前でも(実際に出走するかは別として)、出走するレースがあらかじめわかるようになっています。

出走投票

確定番組に基づいて、レースに出ますという最終決定の申込を地方競馬全主催者で「出走投票」と呼びます。

実施日は主催者によって傾向が異なっており、各開催日ごとに2~3日前に行う主催者と、連続開催日の初日の2~3日前に連続開催分をまとめて行う主催者に分かれます。また、重賞競走のみ他の競走より先行して投票が行われることもあります。

JRAの場合は特別競走以外は出馬投票の段階で出走するレースを選んで出走意思を示す投票を行いますが、地方競馬の場合は決定番組の発表段階でどのレースに出走可能かが既に編成されているという違いがあります。ただし、その編成方法が主催者、また競走の種類によって違うため、どういう投票をするかが異なります。

出走できるレースが指定されている場合

出走申込を経て編成された時点で、希望するなどして最初から出走するのはこのレースと指定されているケース。出走する場合はそのままそのレースに出走投票する形となります。

出走できるレースが複数設定されている場合

編成された時点で自己条件のレースが距離違いや日付違いで複数設けられてるケース。この場合は日付や距離を選んだうえで出走投票することとなります。

一括投票の場合

平場によく見られる同日同一条件の競走がいくつも設定されている場合に行われる方式。レースごとに分けず、一括投票とされたレース分を一本にまとめて出走投票を受け付けます。

それを番組賞金順などの方法で投票馬を順序付けしたあと、対象のレース数で上位から順に均等割りするなどして各レースに割り振るものです。

投票後の組み替えも

出走投票の結果、頭数が足らない場合はそのまま不成立となるケースもあります。

ただし、クラスが同じで距離が違う競走があったり、隣接条件のレースに空きがある場合は出走レースを変更して出走機会が確保されることがあります。

また、出走申込では成立したものの投票の結果で出走頭数が減ったり不成立となる恐れがある場合は、決定番組にその対象レースは出走投票の結果次第で組み替えがあり得ることを注釈で付記しているケースもあります。

出馬表確定

出走投票の結果を受けて各レースの出走馬が確定。各馬の馬番号が抽選により決定された後、出馬表が発表されます。多くは出走投票当日に発表されますが、連続開催分をまとめて投票する主催者では、後の開催分の発表が翌日以降となるケースもみられます。

地方競馬においては遅くとも競走2日前の午後には出馬表の発表を終えています。

おわりに

ある程度共通する面やパターンはあるのですが、少し詳しく見るとすぐに各場毎に違っていきます。実情と趣向の折り合いを付けたレース編成の方法はそれぞれ。詳しくは各場毎にまとめた記事をご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました