中央競馬では年間の大きなトピックとなる3歳馬のクラシック三冠競走。三冠馬の登場なるかという段階に至れば大きな注目を浴びます。一方、地方競馬では各地でそれぞれ3歳馬の路線が形成されてきたこともあって、かつてはダービー的なレースが秋にあったり、三冠路線の形成自体が古くないケース、さらには構成競走が入れ替えられるなどと様々。変遷を経て形成された現在の各地の3歳三冠競走を見てみましょう。
帯広ばんえい競馬
- 7月31日第47回ばんえい大賞典(BG3)
帯広200m 1着賞金170万円
- 11月6日第47回ばんえい菊花賞(BG2)
帯広200m 1着賞金200万円
- 12月29日第51回ばんえいダービー(BG1)
帯広200m 1着賞金300万円
ばんえい競馬では先に「ばんえいダービー」のみが生まれた後、1975年に「ばんえい大賞典」「ばんえい菊花賞」が新設され路線が確立。途中順番の入れ替えはあったものの、この3競走で構成されている形は不変。年末に行われる「ばんえいダービー」は「日本一遅いダービー」とも呼ばれます。
参考:「ばんえい大賞典」→こちら
(ばんえい十勝公式ウェブサイトより)
※3歳三冠路線の説明
ホッカイドウ競馬
- 4月28日第46回北斗盃(H2)
門別1600m 1着賞金500万円
地方全国交流競走 - 6月16日第50回北海優駿(ダービー)(H1)
門別2000m 1着賞金1000万円
地方全国交流競走 - 8月16日第43回王冠賞(H2)
門別1800m 1着賞金500万円
地方全国交流競走
1980年に「王冠賞」が創設されて以来、順番の入れ替わりや開催地、施行距離は変更されているものの構成は不変の三冠路線で、3競走とも地方全国交流競走となっているのが珍しいところ。
2016年からは三冠を達成した馬主に2000万円の「3歳三冠賞」を贈呈する取り組みを行うなど、三冠路線の魅力向上も図っています。
(ホッカイドウ競馬公式ウェブサイトより)
岩手競馬
- 5月1日第42回ダイヤモンドカップ(M1)
水沢ダート1600m 1着賞金800万円
- 6月14日第30回東北優駿(岩手ダービー)(M1)
水沢ダート2000m 1着賞金1000万円
- 9月4日第54回不来方賞(M1)
盛岡ダート2000m 1着賞金800万円
- 5月15日第22回留守杯日高賞(M1)
水沢ダート1600m 1着賞金500万円
牝馬限定 地方全国交流競走 - 8月7日第36回ひまわり賞(オークス)(M1)
盛岡ダート1800m 1着賞金500万円
牝馬限定 - 9月18日第3回OROオータムティアラ(M1)
盛岡ダート2000m 1着賞金600万円
牝馬限定
長らく交流競走の「ダービーグランプリ」が三冠に入っていた岩手競馬の三冠路線ですが、2019年に「ダイヤモンドカップ」に代えて「岩手ダービー」を冠する競走を新設。競走名はかつて北日本交流競走として行われていた「東北優駿」を復活させました。この際「ダービーグランプリ」は三冠競走から外れ、以降は地元馬重賞3戦で再構築されています。
全国のダービー競走を同時期に行うキャンペーン「ダービーシリーズ(旧ダービーweek)」に合わせて現在は6月の「東北優駿」に「岩手ダービー」の冠が付いていますが、歴史が最も長い秋の「不来方賞」こそ岩手3歳馬の王者決定戦、という声も。
一方、牝馬三冠路線は2020年に「OROオータムティアラ」を新設し、既存の3歳牝馬重賞2戦を組み合わせて構築した比較的新しい体系で、地方競馬での牝馬3歳三冠路線の形成は南関東に次いで2例目となります。
参考:「岩手競馬2022年度レース体系」→こちら(画像)
(岩手競馬公式ウェブサイトより)
南関東地区
- 5月12日第67回羽田盃(SI)
大井1800m 1着賞金3500万円
- 6月8日第68回東京ダービー(SI)
大井2000m 1着賞金 5000万円
- 7月13日第24回ジャパンダートダービー(JpnI)
大井2000m 1着賞金 6000万円
指定交流競走
- 3月17日第68回桜花賞(SI)
浦和1600m 1着賞金2000万円
牝馬限定 - 5月11日第36回東京プリンセス賞(SI)
大井1800m 1着賞金2000万円
牝馬限定 - 6月15日第58回関東オークス(JpnII)
川崎2100m 1着賞金3500万円
牝馬限定 指定交流競走
南関東3歳三冠は全て大井競馬場で開催。1964年に「東京王冠賞」が創設されて既存3歳重賞と組み合わせて形成、それ以来の長い歴史があります。1999年に指定交流競走の「ジャパンダートダービー」が創設されたあとに「東京王冠賞」が2001年で終了。このため、現在の形は2002年からということになります。
一方牝馬3歳三冠路線は1987年に「東京プリンセス賞」が創設され成立。こちらは船橋を除く南関東3場を転戦する形で行われます。
ジャパンダートダービーは創設当初から、また関東オークスが2000年から指定交流競走となったため、牡馬牝馬とも最終戦は中央遠征馬に勝たなければいけないという高いハードルが待ち受けています。
なお、2024年からは南関東3歳三冠競走を「3歳ダート三冠競走」とし、構成3競走を全てJpnI格付けの指定交流競走に衣替えし、中央・地方統一の3歳ダート競走クラシック路線の競走とすることが発表されています。この際に「ジャパンダートダービー」は開催時期を秋(10月上旬)に移行し、競走名を「ジャパンダートクラシック」に変更することとなっています。
参考:「南関競馬重賞ガイド2022」
(うまレター2022年4月号別冊)
参考:「3歳ダート三冠競走を中心とした2・3歳馬競走の体系整備について」→こちら
(地方競馬情報サイトより(2022.6.20発表))
金沢競馬
- 5月24日第30回北日本新聞杯
金沢1700m 1着賞金250万円
- 6月21日第6回石川ダービー
金沢2000m 1着賞金700万円
- 7月31日第66回MRO金賞
金沢1900m 1着賞金400万円
北陸・東海・近畿地区交流競走 - 9月4日第57回サラブレッド大賞典
金沢2000m 1着賞金300万円
金沢競馬の3歳オープン重賞は2017年に「石川ダービー」が加わり4競走に。ゆえにそれ以前は3競走だったのでそのまま「3歳三冠」と呼んでいたようですが、4競走になった際に代わりに従来の重賞を外して三冠とすることもなく、そのままいわゆる「3歳四冠」という形になっているようです。
実況を担当する耳目社のアナウンサーが執筆しているブログ「金沢競馬担当日記」でこのことが取り上げられていましたが、これを見る限り主催者的には三冠四冠といった形にはこだわってなさそうで、公式からのリリースにも特に3歳三冠(四冠)路線的なものを明示するものは出ていません。
ちなみに、北日本新聞杯・MRO金賞・サラブレッド大賞典の3重賞をまとめて「金沢競馬の3歳三冠」と称してよい、ということは、ノーブルシーズがこれらを制覇した2008年に確認してあります。
(株)耳目社「金沢競馬担当日記」2017.5.25「第25回北日本新聞杯 ヤマミダンス優勝」より引用(全文→こちら)
主催者=石川県の見解として、これらは「三冠レース」だったのです。
そこへ新設された「石川ダービー」をくわえ、これから金沢競馬の3歳戦線は「四冠」と称してよいのかどうか、という問題ですが、これは、「いわゆる」つきで「言っていい」ということになるようです。主催者に確認しました。
東海地区
- 5月4日第61回駿蹄賞(SPI)
名古屋2000m 1着賞金600万円
- 6月7日第52回東海ダービー(SPI)
名古屋2000m 1着賞金900万円
- 8月25日第46回岐阜金賞(SPI)
笠松1900m 1着賞金500万円
少なくとも近年は公式に東海3歳三冠という定義はされておらず、公式からのリリース等にも載っていないのですが長年の地区間交流の関係もあり、メディア等で挙げられているのは上記3競走で長年定着しているというちょっと不思議な位置づけ。となるといつから形成されたとも言いづらいような。
核的な存在の「東海ダービー」が一時指定交流競走の「名古屋優駿」になっていた時期や、「岐阜金賞」と共に他地区との交流競走だった時期があるなど各競走ごとに変遷が見られます。
参考:「ドリームズライン、岐阜金賞Vで東海3冠」(→こちら)
※東海3歳三冠競走の一般的な定義
(岐阜新聞web掲載 2017.10.20付け記事)「東海三冠 ドリームズライン」(→こちら)
(楽天競馬ブログ「ミツオーのセカンド・ボイス」2017.10.20付け)
※東海3歳三冠は公式見解がないという記事
兵庫県競馬
- 4月7日第54回菊水賞(重賞I)
園田1700m 1着賞金1000万円
- 5月4日第23回兵庫チャンピオンシップ(JpnII)
園田1870m 1着賞金3500万円
指定交流競走 - 6月9日第23回兵庫ダービー(重賞I)
園田1870m 1着賞金2000万円
現在の三冠競走は兵庫県競馬がサラブレッド系競走を開始した翌年の2000年度に「兵庫チャンピオンシップ」と「園田ダービー(当時、現「兵庫ダービー」)」を創設した上で、アラブ系三冠競走の1つだった「菊水賞」をサラ系競走に転換して形成。何度か順序や条件が変わったことはあるものの、この3競走での構成自体は開始以来変更されていません。
2戦目の「兵庫チャンピオンシップ」が指定交流競走かつ中央遠征馬に有力馬が揃う傾向があり、三冠達成の難易度が高いとされています。
なお、2024年から「兵庫チャンピオンシップ」は中央・地方統一の3歳ダート短距離路線の頂点競走に位置づけられ、競走距離を1400mに短縮することが発表されています。(これに伴い、兵庫県競馬の3歳三冠路線に改編があるかについては発表されていません)
高知競馬
- 5月1日第26回黒潮皐月賞
高知1400m 1着賞金800万円
- 6月12日黒潮ダービー 第50回高知優駿
高知1900m 1着賞金1600万円
地方全国交流競走 - 8月28日第26回黒潮菊花賞
高知1900m 1着賞金800万円
1997年の重賞競走の体系化に伴って高知4歳(当時)三冠路線を創設することになり、既存の「黒潮ダービー やいろ鳥賞」を「黒潮ダービー 高知優駿」に改称した上で、「黒潮皐月賞」「黒潮菊花賞」を新設して確立。以来現在まで構成は変わっていません。
2009~2012年度に3競走とも近畿・四国・中国地区交流(2012年度は近畿地区を除く)となった時期を経て、2017年度からは「高知優駿」のみ地方全国交流競走とし、賞金を大幅に引き上げた別格的な競走としています。
佐賀競馬
- 5月8日第10回佐賀皐月賞
佐賀1800m 1着賞金500万円
- 5月29日第64回九州ダービー栄城賞
佐賀2000m 1着賞金1000万円
- 9月25日第19回ロータスクラウン賞
佐賀2000m 1着賞金500万円
四国・九州地区交流競走
現在の体系になったのは2018年度に行われた重賞競走の体系再編の時。それまで3歳三冠競走に含まれていた「飛燕賞」に代えて(競走は存続)、古馬のS2重賞だった「佐賀皐月賞」を3歳重賞に変更して三冠路線に組み込み、現在に至ります。
第18回 ロータスクラウン賞は、トゥルスウィー号が勝利し、佐賀三冠を達成!(→こちら)
(さがけいば公式サイト 2021.9.12掲載)
※公式発信の3歳三冠達成の記事