「地方競馬」と一括りに言いますが、それぞれの競馬場は所在地の自治体(もしくは所在自治体によって構成された特別地方公共団体である「一部事務組合」)によって運営されている、独立した主催者が開催するもの。今の現状はどうなっているのかまとめてみました。
地方競馬はいくつある?
現在地方競馬が開催されている競馬場は15。
一方、競馬の呼称は競馬場単位で付されますが、金沢競馬場では石川県と金沢市が別個の主催者として開催しているため厳密には「石川県営金沢競馬」と「金沢市営金沢競馬」という2つの「金沢競馬」が存在します。また岩手県競馬組合は盛岡競馬・水沢競馬(以下「岩手競馬」)を、兵庫県競馬組合が園田競馬・姫路競馬(以下「兵庫県競馬」)の2つを開催しているため、厳密には、
14の主催者により、15場で開催する16の地方競馬が存在する
ということになりますが、岩手競馬、兵庫県競馬、また2種類の金沢競馬はいずれも構成する2つが同じルールで開催しているため、ルールという観点でみると下表の「名称」で区分した13に分かれます。
呼称(一部省略) | 開催場 | 主催者 | 名称 |
ばんえい競馬 | 帯広競馬場 | 帯広市 | ばんえい十勝 |
門別競馬 | 門別競馬場 | 北海道 | ホッカイドウ競馬 |
盛岡競馬 | 盛岡競馬場 | 岩手県競馬組合 | 岩手競馬 |
水沢競馬 | 水沢競馬場 | ||
浦和競馬 | 浦和競馬場 | 埼玉県浦和競馬組合 | 浦和競馬 |
船橋競馬 | 船橋競馬場 | 千葉県競馬組合 | 船橋ケイバ |
大井競馬 | 大井競馬場 | 特別区競馬組合 | 東京シティ競馬 |
川崎競馬 | 川崎競馬場 | 神奈川県川崎競馬組合 | 川崎競馬 |
石川県営金沢競馬 | 金沢競馬場 | 石川県 | 金沢競馬 |
金沢市営金沢競馬 | 金沢市 | ||
笠松競馬 | 笠松競馬場 | 岐阜県地方競馬組合 | 笠松けいば |
名古屋競馬 | 名古屋競馬場 | 愛知県競馬組合 | 金シャチけいばNAGOYA |
園田競馬 | 園田競馬場 | 兵庫県競馬組合 | そのだけいば ひめじけいば |
姫路競馬 | 姫路競馬場 | ||
高知競馬 | 高知競馬場 | 高知県競馬組合 | 高知けいば |
佐賀競馬 | 佐賀競馬場 | 佐賀県競馬組合 | さがけいば |
※北海道は札幌競馬場、愛知県競馬組合は中京競馬場での開催権を現在も有していますが、北海道によるの札幌競馬の開催は2009年5月14日、愛知県競馬組合による中京競馬の開催は2002年1月4日を最後に休止されています。
レースに違いはあるの?
現在は帯広市のみ、そりをつけた馬が山型の障害を越えながらゴールまでの到達時間を競う「ばんえい競走」を開催。残りの主催者は競走距離の走破時間を競う「平地競走」です。中央競馬で行われている「障害競走」は地方競馬では行われていません。
「平地競走」のコースは岩手競馬の盛岡競馬場のみ芝コースとダートコースの両方を持っており、その他の競馬場はダートコースのみとなっています。
平地地方競馬の地区割り
平地競走の地方競馬が交流競走を行う際、「地方全国交流競走」としてどの競馬場の所属馬でも参加できるレースの他、所属を限定して交流を行う競走があり、その対象を下表の地区割りで指定するケースがあります。21世紀初頭の地方競馬の相次ぐ廃止により、今では1地区1主催者の地区が大半となったうえ、北関東や中国のように地区自体が消滅したケースもありました。
このうち、複数の地方競馬が残る南関東地区と東海地区では、常に地区内で開催があるように日程を調整したうえ、一定のルールの下で人馬の地区内交流を行い相互に参戦できるようになっているため、クラス分けルールやレース編成の一部のルールが統一されている特徴があります。
地区 | 対象となる地方競馬 |
---|---|
北海道地区 | 北海道 |
東北地区 | 岩手 |
南関東地区 | 浦和、船橋、大井、川崎 |
北陸地区 | 金沢 |
東海地区 | 笠松、愛知 |
近畿地区 | 兵庫 |
四国地区 | 高知 |
九州地区 | 佐賀 |
「NAR」とは?
中央競馬の主催団体「JRA」(日本中央競馬会)と対比する形で地方競馬のことを協会である「地方競馬全国協会」の略称「NAR」(The National Association of Racing)と表現することがあります。
NARについては下記のように協会公式ウェブサイトで紹介されており、端的に表すと「地方競馬が全国統一で運営したり、質を保たなければならない分野の事業を行ったり、各主催者への支援を行う」団体です。ゆえに、JRAのように自らが競馬を主催しているわけではないため、開催日程やレース編成、クラス分けのルールといった各場主催者が決定する事項については、調整などの後方支援に留まります。
地方競馬全国協会とは
NARは、競馬法に基づく特殊法人として昭和37年8月1日に設立され、平成20年1月1日からは競馬法の改正により、地方競馬主催者の共通の利益となる事業等を実施する公的な地方共同法人として、従前どおり「地方競馬の公正かつ円滑な実施の推進を図るとともに、馬の改良増殖その他畜産の振興に資すること」を目的とした業務を行っています。
地方競馬情報サイト「地方競馬のあらまし」より引用(原文→こちら)
具体的には
- 馬主・競走馬の登録
- 調教師、騎手等の免許
(主催者による厩務員の認定についての調査・支援を含む) - 開催執務委員の派遣及び研修
(裁決・決勝審判・発走等のNAR専門職員の各場派遣や主催者職員への業務研修等) - 競馬の公正化促進と運営改善
- 競馬関係者の表彰
(年間表彰の「NARグランプリ」など) - 企画・広報及び競馬振興策等の推進
(全国統一の情報システム整備等) - 競馬活性化事業
(主催者が相互の連携を促進し、地方競馬の活性化に資する方策への補助) - 畜産振興事業に対する補助
- 競走馬生産振興事業に対する補助
- 調教師・騎手等の養成及び訓練と競馬専門職員の養成
(地方競馬教養センターでの養成課程の実施等)
地方競馬情報サイト「地方競馬のあらまし」より抜粋(原文→こちら)
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