地方競馬各主催者から2023年の日程、主要競走が発表されました。
今年度は「全日本的なダート競走の体系整備」(以下「体系整備」)によって発表されていた2歳の基幹的な競走の変更が踏まえられてものとなっており、全ての各平地地方競馬場の2歳競走の体系に変更がありました。どのように変わったのか見ていきます。
概況・目立つ早期化
デビュー馬が元々多かったホッカイドウ競馬や南関東地区を別とすると、2歳馬の確保に時間がかかる競馬場もあるため、西日本を中心に地方競馬の2歳主要競走の開始は秋頃という流れがありました。
今回、南関東地区を除いて秋に高額賞金の重賞級認定競走「ネクストスター」競走が設置されたことから、事前に(重賞ではない)前哨戦を置いたり、既存重賞を前倒しする形が取られました。また、2歳秋に「ネクストスター」を行わない南関東地区でも従来より早い時期に2歳重賞を新設。この結果、各地で遅くとも夏の終わりまでには2歳競走の主要競走が始まるようになりました。
「ネクストスター競走」の創設の趣旨には「ダート適性馬の地方競馬への早期入厩の促進」がありましたが、各地で早い段階から重賞等の主要競走を置く形で2歳戦が整備されたことで、デビュー場での活躍機会や大きな競走を走るチャンスがどこも従来より増えたといえます。
とはいえ、今回出来上がった路線は各地の実情も踏まえた結果、既存競走の順序や開催間隔をも整理した場もあれば、置き換え程度にとどまった場もあるなどしており、各地で個性が出ている点は変わりません。
来年以降はそれを見極めた素質馬の「勝てる」デビュー地選びも起こることが期待されます。
ホッカイドウ競馬
ホッカイドウ競馬では体系整備により短距離戦の「ネクストスター門別(H1)」の新設と牝馬ダートグレード「エーデルワイス賞(JpnIII)」の時期が遅くなったことに合わせ、既存重賞にも開催時期や条件の変更が大規模に行われて体系を整理。路線ごとに等間隔にレースが行われるよう整理されました。
短距離路線は「ネクストスター門別(H1)」に加え「サッポロクラシックカップ(今年度からH3)」が1200m戦に短縮されて7月に移動したことで4戦に増加。また、時期の調整により「栄冠賞(H2)」から最後の「ネクストスター門別(H1)」まで約1か月ごとに組まれる形に。
一方中距離路線は「栄冠賞(H2)」から枝分かれのような形で、8月の「ブリーダーズゴールドジュニアカップ(今年度からH2)」から始まり「JBC2歳優駿(JpnIII)」までの3競走に。こちらも1か月半程度の等間隔となっています。
また牝馬路線の競走数自体は5競走で変化がないものの、前半の3競走の順番が組み替わった上で距離変更が行われ、最初の「リリーカップ(H3)」から順番に距離が長くなる形に再編されています。
なお、従来2歳重賞は「ブリーダーズゴールドカップ(H2)」以外すべて交流競走となっていましたが、今年度より9月前半までの重賞は北海道所属馬限定に衣替えしています。
岩手競馬
岩手競馬は2022年にJBC競走が行われた関係で暫定的に芝競走になった「若駒賞(M2)」やJBCのアンダーカード化で時期を遅らせた「ジュニアグランプリ(M1)」などは概ね元に戻っています。
体系は芝とダートといった雰囲気があり、開始時期は両路線とも従来より半月程度早まりました。
芝はJBC以前のように9月の「ジュニアグランプリ(M1)」までの2競走で終了。一方、ダートは盛岡・水沢を移動しながら1400~1600mで実施する形に変更はなく、北海道・東北交流の「知床賞(M3)」を置き換える形で体系整備により10月に「ネクストスター盛岡(M1)」を設置した上で、開催期間を比較的等間隔となるように再編されています。
南関東地区
南関東地区は2歳秋の「ネクストスター」競走が行われず、世代全体としての川崎「全日本2歳優駿(JpnI)」、牝馬の「東京2歳優駿牝馬(SI)」が頂点となる形は変わっていません。
従来の2歳重賞は9月後半の「ゴールドジュニア(SIII)」からとなっていましたが、2023年度には浦和と川崎にSIIIの重賞が新設されたことで、8月末から南関東の2歳重賞が開始されるようになりました。
基本的に短距離で始まってマイルまでという設定は同じ。一方、大井「ハイセイコー記念(SI)」の時期が若干移動したことで、地区単位で見ると時期が非常に近い競走があるため、陣営は競走を選んでいく形になるといえます。
金沢競馬
金沢競馬は体系整備により「ネクストスター金沢」が9月下旬に設定されました。これにより、同時期に行われていた牝馬限定の「金沢プリンセスカップ」が牡牝混合の「石川テレビ杯」に変更されて8月末に移動。このため牝馬限定戦は「金沢シンデレラカップ」のみに。また、「兼六園ジュニアカップ」が取りやめとなったため、重賞の数は変わらず。時期が進むにつれ距離が伸びる形も同じです。
なお金沢競馬は2歳重賞開始前からJRA認定競走や準重賞の2歳競走を組んでおり、2歳の主要競走は8月当初から始まります。
東海地区
東海地区は体系整備により10月中旬に笠松、下旬に名古屋でそれぞれネクストスターを設定。両競走は所属馬限定となり地区内交流は行われません。
この地区は元々2歳重賞自体が少なく、従来から名古屋はJRA認定競走、笠松は所属馬限定の準重賞やJRA認定競走を複数組んで交流の重賞を組み合わせて2歳の主要競走を形成していました。
その形に変更はありませんが、日程が公表されている笠松に関しては、最初の重賞が1か月早くなる関係か、準重賞が従来より1か月ほど早い8月から実施されることとなっています。
兵庫県競馬
体系整備により設置された「ネクストスター園田」が従来の「兵庫若駒賞」の時期に入ったため、同重賞は8月末に移動。さらに今年度から「兵庫ジュベナイルカップ」が8月上旬に新設。従来より2か月近く早い8月上旬から早速2つの重賞を開催し、スタートを早めることとなりました。
距離は最後の「兵庫ジュニアカップ」以外は全て1400m戦という設定に変化はありません。
高知競馬
体系整備に伴い新設された「ネクストスター高知」は従来の「黒潮ジュニアチャンピオンシップ」を置き換える形になったため、重賞の数に変更はなく、分岐のない1本の2歳路線という形も変更はありません。
なお高知競馬でも重賞の前に前哨戦となる準重賞を行っており、従来は10月に1競走設置されていましたが、2023年度から9月にも1競走新設されたため、主要競走の開始が1か月ほど早まっています。
佐賀競馬
体系整備により「ネクストスター佐賀」が設置され、元々その時期に行われていた「九州ジュニアチャンピオン」は1か月前倒しとなり2歳重賞が1競走増、2歳主要競走の開始時期が1か月早まる形になりました。
「九州ジュニアチャンピオン」には従来から事前にトライアル競走が設定されており、時期移動となった2023年度も引き続き実施されることから前哨戦は8月から行われることとなります。