(更新:2023.4.15「JRA令和5年度夏季競馬番組」を受けて更新)
2022年11月28日に地方競馬主催者・全国公営競馬主催者協議会・日本中央競馬会(JRA)・地方競馬全国協会(NAR)の4者連名で発表された「全日本的なダート競走の体系整備について」により行われる施策として「重賞級認定競走(ネクストスター)の新設」がうたわれており、その内容は、2歳秋と3歳春に各地で短距離の高額賞金競走を合計12競走新設するというものでした。
その際、「重賞級認定競走」自体に関する説明がなかったため、
重賞「級」ということは重賞じゃないのか?
認定が付いているということはJRA認定競走なのか?
という疑問がごく一部から湧いたような、湧いていないような…。
「上級認定競走」とは別なのか
競馬で「認定」といえば、勝利すると地方在籍馬ながらJRAの特別指定競走へ遠征できる「認定馬」となれる「(JRA)認定競走」があります。認定競走はこれまで3つに大別されていました。
(このほか東京シティ競馬(大井競馬)でのみ開催されている下記「上級認定競走」と同じ効力の「(JRA)指定競走」があります)
名称 | 定義 | 例 |
---|---|---|
上級認定競走 | 認定競走のうち、 上位格付けの競走で JRAが認めたもの | 各地のJRA認定の付いた2歳重賞や 2歳特別競走 (門別「ウィナーズチャレンジ」や 兵庫「アッパートライ競走」等) |
認定新馬 | 認定競走の新馬戦 | 門別「フレッシュチャレンジ競走」 |
認定未勝利 | 認定競走未勝利馬 による認定競走 | 門別「アタックチャレンジ競走」 |
3つの中で「重賞級認定競走」という言葉の響きに近いのは「上級認定競走」と思われ、2022年度時点で多くの主催者が実施していたJRA認定競走の2歳重賞や特別競走はこの区分の競走でした。
しかし、地方競馬から2023年度の開催日程が発表されていくと、「ネクストスター」は開催する全ての主催者が重賞競走として実施しているものの、一部の主催者で「ネクストスター」は「重賞級認定競走」、従来からあるJRA認定競走の重賞は「JRA(もしくは上級)認定競走」と記述を分けているケースが見られました。
賞金は確かに高いが一見これまでの「上級認定競走」の重賞と変わらないように見える「重賞級認定競走」。何が違うのか…。
その答えは、JRAの競馬番組にありました。
「重賞級認定競走」とは最上位の認定競走である
JRAは春・夏・秋の3季に分けて競馬番組を発表していますが、その中に「中央競馬指定交流競走に出走する地方競馬所属馬の決定方法」という項目があり、ここに地方所属馬の交流競走への出走資格等が規定されています。
「重賞級認定競走」が始まる年の最初の番組である「令和5年度春季競馬」において本項目が改正されており、従来から存在した「上級認定競走」とは別の存在として「重賞級認定競走」の定義付けがなされていました。
3.出走申込み
JRA公式ウェブサイト「中央競馬指定交流競走に出走する地方競馬所属馬の決定方法(令和5年度春季競馬)」より(→こちら)
(中略)
(2)出走申込みできる競走
[1][特指]
出走申込み締切日において、収得賞金により決定される競走条件が該当する競走に限り出走申込みできるものとする。
ただし、以下に該当する地方競馬所属馬については、出走申込みできないものとする。
イ 出走申込み締切日までに出走した前2競走のいずれにおいても第5着以内の着順を得なかった馬。ただし、重賞級認定競走(認定競走のうち、主催者の各開催において最上位に格付けされた競走であって、本会が認めたものをいう。以下同じ。)および上級認定競走(認定競走のうち、主催者の各開催において上位に格付けされた競走であって、本会が認めたものをいう。以下同じ。)において第1着となったことのある認定馬および指定競走勝馬を除く。(以下略)
微妙な表現の違いですが、認定競走のうち、地方競馬の各開催の中での最上位格付けの競走でJRAが認めたものは重賞級認定競走となる模様です。ただし、「ネクストスター」以外の従来からあるJRA認定競走の地方競馬の2歳重賞の中で重賞級認定競走となったものはなさそうです(その場合は引き続き上級認定競走の扱い)。
一部の[特指]で選定上位
出走申込みの資格においては重賞級認定競走も上級認定競走も同じ扱いですが、差があるのが特別指定競走の出走馬の決定方法で、改正前まで上級認定競走勝馬が最優先となっていた競走に関して、重賞級認定競走勝馬が最優先とされるようになりました。
対象となるのは条件クラスの特別指定競走と、夏季番組における2歳の特別指定競走(ただし、従来から上級認定競走1着馬しか出走申込できない「函館2歳ステークス(GIII)」は除く)となっています。
順位
JRA公式ウェブサイト「中央競馬指定交流競走に出走する地方競馬所属馬の決定方法(令和5年度春季競馬)」より(→こちら)
1 重賞級認定競走において第1着となったことのある認定馬
2 上級認定競走において第1着となったことのある認定馬および指定競走勝馬
3 その他(重賞級認定競走および上級認定競走以外)の認定競走で第1着となったことのある認定馬
4 その他の馬
同順位の場合は抽選により決定する。
なお、それ以外の特別指定競走や指定競走にはJRA認定馬に対する特別措置自体が元々ありません。
おわりに
「重賞級認定競走」は単に高額賞金の重賞競走というだけではなく、勝馬はJRA認定馬となり、その中でも部分的に最上位の扱いを受ける特典も付いた競走であるという認識でよさそうです。
後々JRAに遠征することになった場合、「ネクストスター」を勝っていたおかげで希望の競走に優先的に出走できるといったことが、ひょっとすると起こる…のかもしれません。