2023年2月20日、南関東4競馬場公式ウェブサイトより「南関東4競馬場における番組編成のための新たな格付制度の導入(格付ポイント制)および2歳馬の先行導入に関わるお知らせ」がリリースされ、クラス分け・番組編成に格付ポイント制を導入することが発表されました。
賞金ではなく着順によるポイントで番組編成を決定する方式は、2009(平成21)年度から導入している兵庫県競馬に次いで2例目となります。
ポイント
- 南関東4競馬場のクラス分けを「獲得賞金に基づく番組賞金」から「着順に応じたポイント」に変更する
- 競馬場毎の賞金額に関わらず、南関東地区及び全国のダートグレード競走は競走種類に応じて統一したポイントを与え、その合計値で格付を決定する
- 2歳馬は2023(令和5)年4月1日から先行して導入し、3歳以上馬は2024(令和6)年1月1日から適用する
新格付制度の概要
今回発表された制度は先行導入される2歳競走に関わる部分とされているため、以下にまとめた概要は、2歳競走に適用される仕組みとお考え下さい。3歳以上馬(一般)競走に関しては2023年10月頃に改めて説明が行われるとのことです。
- 競走種類と着順(1~5着)に応じて格付ポイント表(下表)で定められたポイントを付与し、そのポイントによってクラス分け、番組編成を行う
2歳競走 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着 | 5着 | |
重賞 競走 |
JpnI | 2,000 | 700 | 400 | 200 | 100 |
JpnII・SI | 1,500 | 525 | 300 | 150 | 75 | |
JpnIII・SII・牝馬SI |
1,200 | 420 | 240 | 120 | 60 | |
SIII・牝馬SII | 1,000 | 350 | 200 | 100 | 50 | |
牝馬SIII | 840 | 294 | 168 | 84 | 42 | |
準重賞競走 | 600 | 216 | 132 | 78 | 54 | |
特別競走 | 320 | 128 | 80 | 48 | 32 | |
普通 競走 |
新馬戦 | 280 | 112 | 70 | 42 | 28 |
その他 | 250 | 100 | 63 | 38 | 25 |
- ダートグレード競走の入着は格付ポイント表のポイントを加算する
- ダートグレード以外の他地区の競走、外国の競馬場で出走し獲得した本賞金は全額を1万で除した値をポイントとする
- 転入馬の当初ポイントは
- ダートグレード競走(開催場は問わない)は格付ポイント表のポイント
- その他条件は現行どおり賞金を算出し、その額を1万で除した値をポイントとする(「現行通り」は参考記事参照)
- 「1万で除した値」は小数点以下を切り捨てる
ねらい
ニュースリリースによると、導入する目的は次のように記されています。
番組賞金を積算していく従来の格付制度では、南関東4競馬場の賞金体系の違いによって、各場ごとに「昇格までの速さ」や「南関東交流時に編成される組」が異なる状態となっております。そのため、従来の賞金額の積み上げ方式による格付から、格毎に統一した数値(格付ポイント)を新たに設定し、改めて、優勝劣敗の原則に立ち、「番組編成を通じて公正公平かつ、より魅力ある競馬番組の実施」を目指すことといたします。
上記リリースページより抜粋
南関東4競馬場は各回の競馬番組に定めた範囲内で常時4場在籍馬の交流を行うことから共通のクラス分けを行っているものの、あくまで別々の主催者が実施している競馬場の集合体であり、各場の施策や慣習によってそれぞれの賞金体系やレース編成方法は異なっています。
このため、一見南関東の同格に見えるレースであっても、出走した競馬場によって番組賞金の算出根拠となる本賞金に差が生じるケースがありました。一方で、クラス分けのボーダーラインの賞金は4場共通であることから、本賞金の低い場の所属馬であれば番組賞金が相対的に低くなるケースが起こり得ました。
また、交流競走になると南関東の同じようなレースに出て同じような成績の馬であっても、番組賞金の加算過程の違いで編成順位に差がついていたり、同じ日の同じ条件に申し込んでも組が違う可能性もありました。
番組賞金による評価は、賞金の大小がレベルの違いを表すという大前提に立ったものですが、「南関東」という括りの中では同格のレースに本賞金(開催場)の違いで評価の差を生じるのは不公平との考えに至ったものと推察されます。
今回のポイント制により、南関東に在籍している間は、4場どこでも実際の獲得賞金に関わらずレースの格ごとに決めた同じポイントを加算することによって、所属場を問わず昇格していく幅をレースの格に応じて等しくしてルールの隙を埋め、公平性を高めたものと思われます。
2歳競走からの先行導入
今回のポイント制はまず2歳競走のみ先行導入とされ、既にレースが続いている3歳競走と一般競走は2023年中は現行の番組賞金評価による編成が継続されます。
2歳戦は転入馬以外は全馬0ポイントからスタートであり、デビュー当初から新ルールによる一律のポイント加算が行われていくことで、デビューからの成績が近い馬は同じようなポイントになることが想定されるため、南関東内の交流競走になっても、より成績の拮抗した馬が集まるものと思われます。
なお、南関東地区の2歳競走は元々クラス分けが行われていないため、2歳競走に関しては見た目の変化自体はさほどないものと思われます。
おわりに~ベースはやっぱり賞金?
ポイント制の評価は兵庫県競馬が3歳競走・一般競走で実施していますが、こちらはどのクラスでも一定の勝利数でクラスが上がることに制度の重点を置いており、獲得賞金の大小は一切、またレースの格も重賞以外はポイントの加算に反映されていません。また、他地区からの転入も一部を除いて成績を問わず、直前出走のクラスを元に転入クラスとポイントを設定しています。
一方、今回の南関東地区のポイント制では、転入馬のポイント換算ルールは、ダートグレード競走を除いて従来の番組賞金によるクラス分けでのルールが元になっているほか、各種換算の際は計算された賞金を「1万で除した値」が用いられるのが目立ちます。これらから「1ポイント=番組賞金1万円」なのではとも推測されます。
3歳以上馬も同じであれば、この仕組みは兵庫県競馬のような独自性の高いポイントというよりは、これまでのシステムはそのままで、南関東出走時の加算値だけ場間差を生じさせない形にした仕組みになっている可能性もありますが…。どのような制度になっているか気になるところです。今後の発表を見守りたいと思います。