帯広ばんえい競馬のレース編成

帯広ばんえい競馬レース編成

ばんえい競馬は帯広市のみが主催し、帯広競馬場だけで行われています。1競馬場だけで完結していることからルールには独自色が強いものの、レース編成に関する情報は比較的多く発表されていることから、まとめました。

本記事は公式ウェブサイトで公開されている要領、要綱等のルールに、実際のレース編成状況を加味して構成した作者の私見です。

レース編成の流れ

ばんえい競馬のレースは開催回単位で編成されます。

開催回中の日取りは概ね1週3日の開催を2週行うのが基本となっています。

各回の初日開催の4日前に番組、格付、出走予定馬が公式ウェブサイトに掲載されたのち、各開催日ごとに2日前に行われる出走投票でレースへの出走馬が確定します。

ばんえい競馬レース編成の流れ
  • 手順1
    競馬番組発表

    ※規則では出走申込締切の20日前までに発表、この段階で一般公開はされていない

  • 手順2
    出走申込

  • 手順3
    公式ウェブサイトでの番組、編成馬発表(開催回単位)

    当該開催回初日の概ね4日前

  • 手順4
    出走投票

    レース開催日の2日前

  • 手順5
    出馬表発表

    出走投票日当日

  • 手順6
    レース開催

レースの種別

ばんえい競馬では「重賞競走」「準重賞競走」「特別競走」「普通競走」の4区分のレースが設定されています。

特別競走以上の競走は年度当初に「重賞・特別競走実施計画」にて発表された競走の他、事前発表された競走がない開催日の場合はメインレースが特別競走として行われています。

基本的にはB2クラス1組以上の競走がメインレースに充てられて特別競走となる傾向が見られますが、開催回内の他の上級競走との兼ね合いもあってか、B1クラスやB2クラスでは特別競走が設定されないことがあったりするなど、設定にはバラツキが見られます。

レースの編成方法

ばんえい競馬の3歳馬以上は過去3年度+今年度の獲得賞金を基本にした「通算収得賞金」、2歳馬はデビューからの獲得賞金のベースにした「本年度収得賞金」により開催回ごとにクラス分けが行われます。

一走目

1開催で全クラスが1走するようにレースが組まれるのが基本となっており、まず、下記の方法を使って各クラス内で「組」が作られ、1組につき1レースが割り当てられます。

本年度収得賞金順編成

ばんえい競馬で基本のレース編成方法となっているのが「本年度収得賞金順」による編成です。

3歳以上馬の大半の開催と、「通算収得賞金」=「本年度収得賞金」である2歳戦は通年でこの編成方法となります。

ばんえい競馬 組分けのイメージ図

3歳以上馬は通算収得賞金順で「オープン」と「A」~「C」にクラス分けしたのち、クラス内の序列を本年度に獲得した収得賞金の上位から順に付けるという仕組みです。この序列で上位から順に1組、2組…となるよう組分けが行われます。

2歳馬に賞金ごとのクラス分けはありませんが、開催回ごとにばんえい重量が最大「A」~「D」の4段階に分かれたレースが設定されており、序列上位から2歳戦の総レース数に応じて組分けされ、上位の組から順に「A」のレース群→「B」レース群…と編成されます。

この方式の場合、本年度に活躍を続けている馬であれば本年度に収得賞金を多く獲得したことで相対的に序列が高くなり、逆に過去の成績でクラスが高くても本年度に賞金獲得が少ない場合は下の組に下がったり、留まり続けることとなります。

また、昇級しても本年度収得賞金はリセットされないため、昇級先の馬の状況によっては、昇級初戦からクラス上位の序列となり上位組は本年度の活躍馬が集まる形となります。

一方、開催が進むにつれて下位組は年度内の獲得賞金が少ない成績不振馬が集約されていくため、下位組馬にとっても次第に相手関係が軽減されていくことが期待されます。

通算収得賞金順編成

一方、クラス分けで使われる通算収得賞金をそのままクラス内の序列付けにも用いるのが「通算収得賞金順編成」です。実施されるのは3歳以上の競走のうち、全馬本年度収得賞金がゼロである第1回開催と年度途中に2回程度組まれます。

本年度収得賞金順とは序列が全く変わるため、対戦メンバーが大きく入れ替わります。

※2023年度の通算収得賞金順編成実施回

  • 第1回(2023年4月21日~2023年4月25日)
  • 第7回(2023年7月8日~2023年7月17日)
  • 第12回(2023年9月16日~2023年9月25日)

二走目

番組に余裕がある場合は、連闘馬だけの「二走目」レースが組まれます。ばんえい競馬には二走目の編成方法が2種類あります。

決勝競走

開催前半週に「予選」と指定された2競走があらかじめ設定されており、その2競走の上位5頭が開催後半週の「決勝」競走に出走できるというもの。

予選は基本的に同じクラスの隣りあった組のレース2つが指定されますが、片方がクラス混合戦になっている場合もあります。

予選競走の指定は公式ウェブサイト掲載の競馬番組で確認することができます。

決勝競走は予選競走の組が併記された上で「決勝」と表示されており、出馬表からも判別することができます。

  • 予選が「C1-1」と「C1-2」
    →決勝は「C1-1.2決勝」
  • 予選が「B2-3」と「B2-4混合」(この時B1クラス1頭、B2クラス7頭)
    →決勝は「B2-3.4決勝混合」

なお、決勝という響きから競走の格が高く感じられますが、予選上位馬の勝敗を決するという意味合いのようで、格的には普通のレースであり、予選が特別競走で決勝が普通競走というケースも見られました。

その他の二走目戦

決勝競走以外にも二走目戦が組まれることがあります。この二走目戦も当初の番組表であらかじめレースが組まれています。

競走条件の表示は「B2-1」や「B3-2」と一般的な「級-組」だけになっており、出走馬の競走成績も見ないとほかの競走と見分けがつきません。

ただし、二走目戦は改めて1組から組番号が振り直されているため、同一開催回に同じ競走条件のレースが2つ存在することとなり、それに基づけば後半週のレースはおのずと二走目戦と判別できます。

なお、クラスで複数の二走目戦が組まれている場合、出走馬の組分けは通算収得賞金順で行うようです。

オープン競走・選抜競走

重賞競走、準重賞競走、企画系の特別競走については「オープン競走」「選抜競走」として設定され、毎回の競馬番組で出走馬の選定ルールが別途定められており、公式ウェブサイトでも公開されています。

オープン競走と選抜競走の違いは下記のように思われます。

オープン競走全体、もしくは世代・性別の最上位競走。
出走資格はほぼ馬齢や性別のみ。
資格内最上位馬による競走と指定されるか、
資格設定上そうなることが多い。
選抜競走馬齢・性別だけでなくクラスや成績、出走希望、
ファン投票結果などが出走資格に付された競走。

重賞競走は全てオープン競走と思われがちですが、世代・全体の最上位とならない下記の重賞競走は競馬番組の編成区分上は選抜競走の扱いとなっています。

重賞競走名主な出走資格
ばんえい十勝
オッズパーク杯(BG2)
4歳以上前年度収得賞金順
ばんえいグランプリ(BG2)3歳以上ファン投票上位馬7頭
+3歳以上通算収得賞金上位3頭
ドリームエイジカップ(BG3)4~7歳の各馬齢の通算収得賞金
上位2頭
+8歳以上の通算収得賞金上位2頭
ヤングチャンピオンシップ(BG2)2歳各産駒特別5競走の着上位2頭
チャンピオンカップ(BG2)4歳以上重賞競走馬の通算収得賞金順

オープン重賞は大半が通算収得賞金順による選出が行われ、希望を取る場合でも不足時は通算収得賞金順による補充が行われることから、格付最上位にも出走資格が及びます。ただし、「ばんえい記念(BG1)」はばんえい競馬唯一の最大ばんえい重量1000kg戦という特殊性もあり、頭数不足時の単純な補充は行われていません。

産地限定競走

毎年2歳戦で行われているのが「産地限定競走」と呼ばれる生産自治体で出走資格を設けた競走で、選抜競走の一種といえますが、番組上は「産地限定」と表示されます。

道内外を下記の5地区に分けた「〇〇産駒特別」のレース名で、資格馬の本年度収得賞金上位馬が出走、上位2頭は重賞「ヤングチャンピオンシップ(BG2)」(こちらは選抜競走)へ出走できるトライアル的な競走となっており、一連の競走は「ばんえい甲子園」と公式でも呼ばれる名物シリーズとなっています。

地区対象地域
北央空知、上川、留萌、宗谷管内
十勝十勝管内
北見オホーツク管内
釧路釧路、根室管内
南北海道石狩、後志、渡島、檜山、
胆振、日高管内と北海道外
※地域は北海道の「総合振興局」「振興局」名で表記され、管轄区域が対象となる

レース編成の特徴

地方競馬のみならず世界で唯一とされるばんえい競馬だけに、平地競馬とはレース編成に関しても独自性が強くなっています。

レース編成上の馬齢の区切りは会計年度

ばんえい競馬の競走馬も1月1日に馬齢を1つ重ねるのは平地の競走馬と同様です。

かつては地方自治体が運営する性質や法令の制度設計の関係もあり、地方競馬の成績は4月1日~翌年3月31日の「会計年度」で集計することが多かったようですが、暦年で区切るJRAとの交流が進むに従い、平地の地方競馬では暦年かそれに近い形で成績集計等を行うようになっています。

しかし、ばんえい競馬は現在も会計年度単位で1シーズンを構成しており、2歳戦の仕組みは「3歳戦」と名称を変えて明け3歳3月まで継続され、また3・4歳馬で構成されるCクラスも世代が入れ替わるのは4月となります。

古馬的位置づけは5歳から

ほぼ同じ斤量でスピードを競う平地競馬の場合は3歳馬でも古馬を負かすケースはありますが、高重量を載せたそりを引くばんえい競馬の場合はそりを引くパワーや道中の障害を越える能力も求められます。

成績が良ければ早くから古馬のクラスに上がり古馬とも対戦するようになるのはばんえい競馬も同じですが、若馬に関してはじっくり能力を向上させるためか、近い世代や同世代との対戦が平地よりも長く設けられており、世代全体が古馬的位置づけになるのは5歳4月の時期となります。

若馬のレース編成の違い
  ばんえい競馬 平地競馬
2歳戦 2歳馬だけの競走 2歳馬だけの競走
(高賞金馬は古馬編入される場あり)
馬齢限定クラス 一定の賞金がなければ
5歳3月まで馬齢限定クラス
3歳まで
古馬編入 一定の賞金があれば
3歳4月から編入
概ね3歳6~9月以降全馬編入の場が多い
遅くとも明け4歳から全馬編入
世代限定重賞 2歳~明け5歳まで 2歳、3歳

クラスの「オープン」と編成条件の「オープン」

ばんえい競馬では、正式な最上位クラスとして、地方競馬で唯一A級の上に「オープン」クラスを設けています。

クラスの1つであるため、クラス内で通常編成での競走が複数行われる場合は「オープンの1組(オープン-1)」「オープンの2組(オープン-2)」と組番号が付されたり、下位級との混合競走(「オープン混合」や「オープン・A1混合」など)が生じるなど、他場では見られない競走条件の競走が現れることがあります。

一方、「3歳馬の通算収得賞金順に編成する」といった、重賞や世代の最上位戦的な位置づけの競走にも「オープン」の表示が行われます(例:「3歳牡馬オープン」「4歳牝馬オープン」)。

こちらは編成条件として格付けを問わないことを意味する「オープン競走」であり、出走馬の在籍クラスとは連動していません。

クラス混合競走

地方競馬で一般的に見られるクラス混合競走は、格付けが隣接した馬同士で行うために、通常は「上クラスの下位」と「下クラスの上位」で組まれます。

しかし、ばんえい競馬はクラス分けは通算収得賞金、クラス内の序列は通常の場合本年度収得賞金順と違う指標を使っています。このため、クラス混合競走の場合は、クラス内序列の方を優先し、隣接クラスの本年度収得賞金上位もしくは下位同士という組み方が行われています。

ただし、まだ番組賞金の控除が行われていない3歳と4歳だけが在籍するCクラスのクラス混合戦と、年に数回組まれるクラス内の序列も通算収得賞金順で行う開催の場合は「通算収得賞金順の序列で組んだ上クラスの下位と下クラスの上位」での編成となります。

クラス混合戦の編成パターン

地方他場では混合された上側のクラスの競走として扱われることが一般的で、上級格付馬の方が負担重量が重くなるハンデを付けますが、ばんえい競馬の場合は元々所属クラスが上がるごとにばんえい重量(=そりに載せるおもりの重量)が重くなる設定がされているため、クラス混合戦を理由にしてさらにハンデを付すことはありません。

格付・編成順位の設定

ばんえい競馬のクラス混合戦の競走条件の設定は、過去の編成状況から混合にならなかった場合予定されていたクラスの競走として扱われていると推定されます。

一般的にはクラス名が頭出しされているクラスの方が頭数が多くなっていますが、両クラス同頭数のレースの場合、頭出しされるクラスがどちらになるかは上下とも例があります。

また、オープンクラスが絡む競走では「オープン混合」「オープン・A1混合」「A1混合(にオープンクラス馬が編成されている)」といったパターンがあるものの、編成状況からどういった場合どの表示が使われるのかは読み取れませんでした。

競走条件の表示はクラスの格付・編成順位(組)に「混合」の文字が付きます。

  • B1クラス上位8頭とB2クラス下位2頭
    →「B1混合-1」
  • B2クラス下位4頭とB3クラス下位5頭
    →「B3混合-8」

公式ウェブサイト レース編成関連ページ

競馬番組表、番組編成要領等

級別表(クラス分け)

直近各開催日出走予定馬

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